FCAは最強の金融規制機関？それでも詐欺が起きる理由とは

イギリスの金融規制機関であるFCA（Financial Conduct Authority）は、世界的に見ても厳格かつ信頼性の高い監督機関として知られています。

では、FCAの何がそれほど優れているのか、そしてなぜその監視下で詐欺が発生してしまうのか、不思議に感じたことはありませんか?

この記事では、FCAのすごさをわかりやすく解説しつつ、一部の悪徳業者がFCAの名前をどうやって悪用して詐欺を働いているのか、その手口を深掘りしていきます。

3億円の仮想通貨詐欺の判決

FCAの監督能力の高さを示す象徴的な事件として、近年発生した仮想通貨詐欺事件があります。

FCAは先月、約3億円の被害を出した詐欺に関与した2名に対し、合計で12年以上の懲役刑を言い渡す判決を勝ち取りました。

この事件では、Raymondip Bedi氏が5年4ヶ月、Patrick Mavanga氏が6年6ヶ月の懲役を受けました。

犯人たちは「CCX Capital」や「Astaria Group LLP」といった架空の業者名を用いて、まるで本物のようなウェブサイトを作り、「高利回りの仮想通貨投資」をうたって、少なくとも65人から総額約3億円を騙し取っていました。

FCAは、この事件で積極的に刑事訴追を行い、犯人の法的責任を追及しました。

FCAは詐欺をどう取り締まっているのか?

ここで注目したいのは、実はFCAは詐欺そのものを直接取り締まる法律上の権限を持っていないということです。

FCAは、英国の金融サービス市場法（FSMA）に基づき設立された組織です。

では、どうやって彼らは詐欺犯を捕まえたのでしょうか?

国家による通常の刑事訴追とは異なり、FCAは「訴追者（private prosecutor）」として、独自に詐欺行為に対して訴訟を起こすことができます。今回の事件もその立場から起訴を進めました。

このように、FCAは与えられた権限を最大限に活用し、違法行為への対応を実現しているのです。

無許可企業への注意喚起とライセンス制度

今回の詐欺に使われた「CCX Capital」や「Astaria Group LLP」は、イギリスで会社として登録されておらず、FCAの登録も受けていない無許可業者でした。

FCAは、イギリス国内で金融サービスを提供するすべての業者が、FCAまたはPRA（健全性規制機構）の許可・登録を受けることを義務付けています。

そのため、投資家はFCAの公式ウェブサイトなどを通じて、対象企業が正規に登録されているかどうかを事前に確認することが極めて重要です。

なぜFCAは世界的に信頼されているのか

FCAが高く評価される背景には、20年以上先を見据えた規制体制の進化があります。

多くの国が業態別の「分業規制」を採用している中、イギリスではすでに1986年にその枠組みを整備していました。

1997年には、CFD（差金決済取引）など新たな金融商品の登場に対応するため、金融サービス機構（FSA）に一元化された監督権限が集約されました。

そして、2008年の世界金融危機を契機に、2013年には「二頭体制（twin-peaks system）」が導入され、FSAはPRAとFCAに分割されました。これにより、金融システムの安定性（PRA）と市場行為の公正性（FCA）という、二つの視点から監督する体制が整ったのです。

FCAとPRAの役割分担と強み

FSAがPRAとFCAに分かれてからは、PRAは会社がお金をきちんと持っているか、健全に経営されているかを監視し、FCAは会社が顧客に対してフェアに取引しているか、ルールを守っているかといった「行為」を監視しています。

この二つの組織はそれぞれ独立しつつも協力し合い、金融市場のあらゆる側面をカバーする、現在最も効果的な規制システムとして世界中で高く評価されています。

イギリスで金融サービスや商品を提供するほとんど全ての会社や個人は、FCAかPRAの許可や登録が義務付けられています。もし、許可のない会社と取引をしてしまうと、何か問題が起きても、金融オンブズマンサービス（Financial Ombudsman Service）という苦情を解決してくれる機関の保護を受けられず、また金融サービス補償機構（FSCS）という万が一の時に補償してくれる制度も使えません。つまり、お金が戻ってくる可能性が極めて低くなってしまうのです。

このように、イギリスは「分業規制」から、デリバティブ取引などにも対応しやすい「FSAによる統一規制」、そしてFCAが中心となる「二頭体制」へと進化してきました。その進化の道のりは、世界の金融規制を少なくとも20年ほどリードしていると言っても過言ではありません。

専門性、全体を捉える力、そしてこれまでの経験と実績、あらゆる面でイギリスのFCAは金融規制の最高峰であり、その信頼性は揺るぎないものなのです。

「FCA許可業者」でも油断は禁物：ActivTradesの事例

FCA（イギリス金融行動監視機構）は、世界で最も厳格かつ信頼されている金融規制機関の一つです。

しかし、FCAの許認可を得ている業者であっても、常に安心して取引できるわけではありません。

その代表例として挙げられるのが、老舗ブローカー「ActivTrades（アクティブトレード）」です。

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20年以上の歴史を持つこの企業は、FCAから「マーケットメイカー（MM）」ライセンスという上位許可を取得していますが、その実態は一枚岩ではありません。以下では、ActivTradesがどのように複数の法人と管轄を使い分け、投資家の誤解を招いているのかを詳しく見ていきましょう。

ウェブサイトに仕掛けられた「選別」のメカニズム

ActivTradesの公式サイトを開くと、FCA監視下の業者サイトである旨が表示されつつ、「英国以外の居住者向けには別のグローバルサイトをご用意しています」とのポップアップが現れます。このポップアップに従って遷移すると、実際の取引先がFCAの監督対象外、たとえばバハマやモーリシャスに拠点を置く法人であるケースがあるのです。

このような「振り分け」は巧妙に設計されており、FCA監視下の業者で口座を開設したと思っていた投資家が、実際には規制の緩い海外法人で取引していたというケースも珍しくありません。公式サイトの最下部には、FCA（英国）、SCB（バハマ）、FSC（モーリシャス）のライセンスが併記されており、法人ごとの棲み分けが確認できます。

バハマSCBライセンスの「盲点」

バハマ金融庁（SCB）が発行するライセンスは、WikiFX上では「オフショア規制」と分類されており、監視・介入の範囲が限定的であると評価されています。言い換えれば、FCAと同等の消費者保護体制を期待することはできません。

このため、バハマ法人が提供するサービスに関してトラブルが発生した場合でも、FCAは一切関与することができず、投資家は自身の責任でリスクを負うことになります。

実際に報告されている苦情とその実態

WikiFXにはActivTradesに関する苦情が複数寄せられており、その多くが「利益の一方的な取り消し」や「出金拒否」に関するものです。特に注目すべきは、これらの苦情がイギリス国内からではなく、アジアや中南米など、FCAの監督外地域から発信されている点です。

例えば、香港のあるユーザーは、利益が出た直後に「ルール違反」として取引を停止され、利益が没収されたと訴えています。このユーザーが使用していた取引サーバーは「ActivTrades Corp」というバハマ法人が提供するもので、FCAの監督とは無関係でした。

複数のサーバーに見る業者の構造的な戦略

さらに、WikiFXによる調査によると、ActivTradesが運営するMT4/MT5のサーバーは合計9つあり、そのうち6つがFCA監督下のイギリス法人に、2つがバハマ法人に紐づいています。この構造を見ると、大半の顧客は信頼性の高いイギリス法人に接続されている一方で、規制の緩いバハマ法人を介した取引も一定数存在することがわかります。

つまり、FCAのライセンスそのものは信頼に足るものですが、そのライセンスを掲げる企業が複数の法人を使い分けることで、実態とは異なる印象を与えている点には注意が必要です。

まとめ

FCAは、制度設計・監督能力・実績いずれをとっても世界有数の金融規制機関であり、イギリスの金融市場の透明性と信頼性を支えています。

しかし、FCAのライセンスを悪用し、名義だけを借りて実態は海外の無規制業者が運営しているというケースも頻繁に見られます。こうした「すり替え」構造によって、投資家は意図せず保護の薄い環境で取引をしてしまうリスクにさらされます。

そのため、投資家自身が情報を見極める力を養い、信頼性の高い情報源を活用して業者の実態を確認することが重要です。WikiFXのような調査プラットフォームを活用することで、事前にリスクを把握し、より安全な投資判断につなげることができるでしょう。

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